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「調整後温室効果ガス排出量を調整する方法」(告示)についての考察

環境行政・統計情報 ナビゲーター 松原 弘直 (まつばら ひろなお) {プロフィール}

2010年05月10日

環境プランナーER
カーボンオフセット・プロバイダー 太田 豊彦

【法律から政令・省令、そして告示へと】
我が国における地球温暖化対策推進に関する、ある重要な告示が、先日、所轄省庁からなされた。
ご承知のとおり『地球温暖化対策の推進に関する法律』(いわゆる温対法)(平成20年6月13日改正)は関連する法の根幹であり、目的と定義及び具体性が具備された法律である。同法の中で、第二十一条の二(温室効果ガス算定排出量の報告)以降に規定されている、いわゆる温対法における算定・報告・公表制度に関する省令(命令)が在る。『温室効果ガス算定排出量等の報告等に関する命令』(平成21年6月23日改正)がそれである。さらに同命令の中で定められている第一条(用語)四「調整後温室効果ガス排出量とは、〜」及び同条五「国内認証排出削減量とは、〜」が、掲題のある重要な告示に該当する命令である。詳細を後述する。

【省令・命令とは何か?】
上記の通り、法律の実行段階での「適用」に関して改正及び附則が生じた場合、命令として細目が告示され、公表される。しかし、「適用該当者」が同命令を実行しようとした際には「解釈を余儀なくされる」ケースが往々にして起こり得る。私はけっして法律の専門家ではないが、前段が長くなったついでに、係わる「基本法」について少し述べさせていただきたい。
先日、(社)環境プランニング学会の春季学術講演会が東京大学にてとり行われた。その際、来賓として小沢鋭仁環境大臣がご挨拶をされた。折に触れ、『地球温暖化対策基本法案』についてコメントされた「この法案は、ディメンションです」と。まさに[重要・大きさ]と冠される『基本法』なのであろう。先に記した温対法が、『京都議定書目標達成計画』(第二章第八条)を包含する対処法であるのに対して、今国会で成立するであろう同基本法案は、いわゆる法律の骨子となる憲法であり、ここから劇的に社会変化がおこりうる可能性がある。公認会計士であり、東京大学大学院講師も務める本郷孔洋(よしひろ)先生は、その近著で「基本法ができると世の中が大きく変わる」と述べられている。(2010PHPビジネス新書)。つまり、本省令告示は、その意味でも「切り離された文言」ではなく、繋がった、あるいは意図されたものである可能性すらある。

【調整後温室効果ガス排出量とは?】
温対法における同報告制度では、原油換算で1500KL/年以上の特定排出者は、CO2排出量(GHG)の実績値を報告しなければならない。特定排出者の多くは、経団連等の自主行動計画による削減目標数値を課しており、単純に報告のみというわけにはいかない。実質的に、報告がその事業者の成果となるのである。したがって、報告者は当然、好結果を反映したい。つまり、技術的に許容されるならば排出権(以下クレジット)を用いたい、と考えるのは妥当なことであろう。じつは、所轄省庁が関連する制度を推進する過程で、以前から産業界(広義での)、あるいは専門家から『国内産クレジット』に関しての利活用について要望が出されていた。そんな中、ようやくというかついに、今回の命令告示となったのである。同命令(第一条第四号)にはこう記されている。『「調整後温室効果ガス排出量」とは、特定排出者が事業活動に伴い排出した温室効果ガスの排出量を、京都議定書第三条の規定に基づく約束を履行するために特定排出者が自主的に取得し国の管理口座へ移転した算定割当量、特定排出者が取得等をした国内認証排出削減量等を勘案して、環境大臣及び経済産業大臣が定める方法により調整して得た温室効果ガスの排出量をいう。』
そして、文中示されている「国内認証排出削減量」とは、同命令(第一条第五号)に明記されている。
『「国内認証排出削減量」とは、国内における他の者の温室効果ガスの排出の抑制等に寄与する各種の取組により削減等がされた二酸化炭素の量として、環境大臣及び経済産業大臣が定めるものをいう。』
以下これらを要約し、告示内容を解説する。

【使えるクレジットは、2つ+1】
つまり、調整後温室効果ガス排出量とは、こうである。
「実排出量(CO2) − クレジット(t-CO2) = 調整されたCO2排出量(反映後報告値)」
この場合の、クレジットの種別は以下。
1.国内クレジット(経産省)
2.オフセット・クレジット(環境省)
3.算定割当量(京都クレジット)
そして、報告書(定型)への記載は、併記のかたちである。(その記載箇所は、意外に明確かつ目立つ)。
したがって、本告示施行日(2010年4月1日)より、特定排出者は「温対法の報告にクレジットを用いて反映させることが可能となった」のである。画期的なことである。つまり、トレードと称される国内排出量取引制度の導入は未定であっても、その柔軟性措置に活用されるクレジット(排出権)は着実にその存在意義を増している。どころか、法令にてしっかりと利活用が定められたのである。そして、同時に重要なことは、そのクレジットが昨今、強力に推進されつつある「国内産排出権」であることだ。
経済産業省の国内クレジット制度と、環境省のJ−VER制度である。これら2つの制度は、時同じくして2008年度に創設され当初はともに浸透性に懸念があったが、2009年後半から徐々に普及し始めている。“仕分け”られずに、平成21年度補正予算や22年度予算にて関連する予算計上が継続されていることからも、本事業の重要性が伺える。

【ダブルカウントの不整合】
さて、好い事づくめ?の本告示内容だが、ふと気になったことがあった。
“ダブルカウント”の問題だ。ダブルカウントとは、「二重計上」のことであり、クレジットがある種の錯誤となって起こり得る。つまり、クレジットの売却者と購入者双方が、同じクレジット(量)を計上してしまうことである。カーボンオフセットの世界では、ダブルカウントはよく論じられており、場合によっては作為的に計上することも可能であり、その真偽について、あるいは解釈を巡って論争すら起こった経緯もあった。基本的には、当局の「見解」で決着することになる。したがって、今回も当局にお伺いを立ててみた。すると、あらたなコトが判明したのである。つまり、こうだ。
調整後温室効果ガスとして、報告書反映に使途されるクレジットの内、オフセット・クレジットは、ダブルカウントに非常にデリケートであり、確実に明示されていた。(「オフセット・クレジット(J−VER制度)利用約款」平成22年1月18日版)。その内容は、オフセット・クレジット購入者が報告制度において、クレジットを使途した(反映させた)場合は、当該クレジット売却者はその同等量を自らの実績値(つまり削減後の数値)に“上乗せ“し、報告しなければならない、となっていた。(トレードの基本概念である)。一方、国内クレジットはその明示がなく、該当書面すらない。リマインドすると答えは“ダブルカウントには相当しない”であった。つまり、「上乗せしなくてもよい」である。
売却者と購入者が双方、同じクレジットを用いることが可能である、実質上。当局の見解は、―報告制度はあくまで報告の義務化であってキャップ(上限)を遵守させる排出量取引制度ではないので、これには当たらない―である。

【制度の乱立と統一化】
クレジットに関わる制度は、多数存在する。世界的に見ても、日本国内においても。
本年度初めに施行した東京都の『総量削減義務と排出量取引制度』もそうであり、他の自治体も追従する構えである。他方、国においてはJVETSや試行制度、そして温対法報告制度や省エネ法下でのみなしも範疇に入る。そして、前述のJ−VERや国内クレジット制度も該当する。いずれも、国際法である『気候変動枠組み条約』及び『京都議定書』を参考にしているため、大きなかい離はないと思われる。しかし、ダブルカウントのように解釈を要する論点では、しばしば不整合が見られ、かつ合理的ではない制度設計がなされている場合が往々にしてある。もちろん、国や自治体の枠取りはひとつではなくある程度の重複は避けられないかもしれない。がしかし、これらを順守する事業者は事務作業の二度手間・三度手間を超えて、不合理であったりもする。国際間でのリンケージは様々な障壁があるだろうが、せめて国内の制度間では「整合性」は図られるべきであり、より効率的な制度設計をするべきであろう。排出権の本質は、限界削減コストを引き下げることにあり、効率的なメカニズムなのである。事務作業やリーガルチェックに追加的なコストが発生するならば本末転倒になりかねない。
“画竜点睛を欠く”は名工にすら生ずる恐れはあるのだ。(寄稿:2010年4月20日)

 

(参考文献)
「わかる!環境経営」本郷孔洋 著(PHP研究所)800円
「読み飛ばさないで!!地球温暖化対策基本法」
季刊誌 産廃ネクスト(日報アイビー)連載リーガル・マインドで読み解く廃棄物関連法規とビジネスシーズ第七回(エコシス・コンサルティング代表 平田耕一 稿)
『地球温暖化対策の推進に関する法律』(平成20年6月13日改正)
http://law.e-gov.go.jp/htmldata/H10/H10HO117.html
『温室効果ガス算定排出量等の報告等に関する命令』(平成21年6月23日改正)
http://law.e-gov.go.jp/htmldata/H18/H18F10011001002.html
「経済産業省・環境省告示第3号・第4号」(環境省報道発表資料平成22年3月31日)
http://www.env.go.jp/press/press.php?serial=12341

 




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